こんな私が、恋したみたいです。
「…ヤキモチ……?」




そんなつもりは、ないんだけれど。




「うん、多分ね」




椅子に座りなおして、私をみてはにかむ。




「他には?」




「え?」





「他に、ないの?」




完全に面白がっている顔。




「ない、よ」




「あるなー?」




白状しなさい、と頬をつままれる。




タコみたいな顔になって、それでも目をそらす。




「やーだー」



ブンブンと顔を振って、橋森くんの攻撃から逃げた。





りっくん呼びが羨ましいだとか、私もそれがいいだとか、一緒にご飯食べたかっただとか。




言えるもんか。





「ふーん?やっぱりっちゃん可愛い」





そんな、軽々しく言うもんじゃないよ。





「嘘つけ」




ドキドキと胸が高鳴るのをよそに、平然とそう言う。




「拗ねた?拗ねたでしょ?可愛い!!」




「もー言わないで〜」




恥ずかしくて、早くここからいなくなりたい。





布団をかぶって、そっぽを向いた。





「言わないから、こっちおいでよ」





「やだ!!」





言うに決まっている。絶対私のことからかっている。





「言わない。約束」




そんな、真面目な声したって信用しないんだからね。





「ねーりっちゃんー!俺りっちゃんと飯食えなかったからりっちゃん不足〜」





「…何、それ」



私もそう思っていた、なんて言わないけど、同じことを思っていて嬉しい。





「お、反応した」




ケラケラと笑う橋森くんを見ると、心がホッとする。





「粟原に会わせなければよかったかもって俺も思ってる」





目があったと同時に、少し顔を赤くして橋森くんが言う。





「俺だけのりっちゃんだと思ってたんだけどなー」




ははって、笑う。





「意味わかんない」





恥ずかしいことを、サラサラと言わないでほしい。





「だってそうじゃん?俺だけのりっちゃんが、粟原と共有りっちゃんになっちゃった」




「…それ、ヤキモチって言うんだよ」





そうなのか、わかんないけど、橋森くんと同じことを言ってみた。





「そうかも、一緒だな」




まだほんのり顔が赤くて、そのまま、私を見る。






「だね」




恥ずかしいけれど、心が暖かくなった。




やっぱり、好きだ、なんて、言えないよね。




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