こんな私が、恋したみたいです。
「りーっちゃん!!」




粟原さんとは打って変わって、元気よく登場してくれた。





誰だよお前、とでも言いたくなるけれど、いちいち言っていられないから、ニコッとする。




「りっちゃん、元気そーだな」




「でしょ」




やっぱり馴れ馴れしい。私もそうすることに慣れたけど。




「おい!そこ俺の椅子だぞ!」




自然にさっきまで橋森くんが座っていた椅子に座る望月くん。




「え?あーどおりでケツがあったかいと思った」




「いーからどけよ!そこ俺の場所!」




2人はいきなり口論を始める。




仲良しなんだな、って、見てわかるぐらいに。




「よくね?お前立とうが座ろうが大して身長変わんねぇよ」




望月くんが発する毒舌に、思わず吹き出してしまった。




「それはないでしょ」




私が応戦していいのか分からないけど、言いたくてたまらなくて、ツッコミを入れてしまった。




「ないってよ!りっちゃんがないって言ってるよ!!」





「座ろうがお前のチビは隠せねぇよ」




どうしても立ち上がりたくないらしい望月くんは、橋森くんをしっしと追い払う。




高校生がこんなに必死に椅子の取り合いをしているんだから、面白いよね。





「橋森くんは、チビネタでいじられてるの?」





粟原さんも、チビチビっていじっていた。





シンプルな質問をしたのに、望月くんはゲラゲラと笑い始める。




失礼な、と思いながらも、なんで?とも思う。




「橋森くん!!!?ウケるそれ!もっかい言って!!」



「え、」





なんでみんな、そんなに笑うの。




「お前橋森くんなの!!?はーっ!息できねぇ」




前はりっくん呼びだったのかもしれないけど、そんなに面白いことなのかと、首をかしげる。




「はぁ。……ぶっ」



落ち着いたと思ったら、また思い出して笑っている。





「橋森くん、この人ヤバくない?」





「もっちは前からヤベぇよ」




「俺がヤバ人?やめろよー、りっくんのがよっぽどヤバイから!」





ヤバい、だなんてなんとも語彙力のない言葉をひたすら言い続けている。




「りっくんのりっちゃんコール聞きたいなぁ」





「おまっ…余計なこと言うなよ!帰すぞ!」




「おぉ、怖」



ガタガタと震えてみせる望月くんと、その背中をバシバシ叩く橋森くん。




なんか、よく分からない話をしているけど、まぁいっか。





「ねぇりっちゃん。りっくんって言ってみなよ」




咳払いをして真面目になった望月くんは、私に向かってそう言う。





「えー、やだよー」




なんだか、慣れないもん。




「一回だけ!ね?」




手を合わせてお願いされても。





「じゃあ、望月くんのいないとこでね」




「もち…?俺はもっち!!はいせーの!」




「え、もっち」




勢いに合わせて、思わず口に出す。




「はいよく言えましたー!」




もっち。




うん。なんかしっくりくるかも。




「ねぇ、もっち。俺のこと忘れてない?」






「ん?おぉ、いたのか。小さくて見えなかった」





いちいちチビと言われる橋森くんに、笑ってしまった。




「…もーいいわ」




ネタにされるのを諦めたらしい。意気消沈して、望月くん、いやもっちの上に座る。





「あれ?もっち小さくない?」




同じネタが始まった。



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