こんな私が、恋したみたいです。
暑い夏に強く吹く風は気持ちがいい。




だけど、やっぱり少しジメジメしている。




だから、りっくんの背中にもたれかかった。





やっぱり汗臭い、だけど、大好きな匂い。





心臓の音が聞こえそうだよ。





「寝るなよー」





私はこんなにドキドキしているのに、笑いながらそう言うから、また、お腹をつまむ。




「ひっでぇ仕打ち」




1人でゲラゲラ笑っている。側から見たら絶対変な人だよ。




私も可笑しくなって、ふふっと笑った。








「はい」





やっぱり、チャリは着くのが早い。




頑張って歩けばよかった。





降りてー、というりっくんを無視して、嫌だという意味でぎゅっと抱きつく。





「…どうしたの?」




自転車を端に寄せて、振り返って私を見る。





「別に」





そう言いながら、もっと強く抱きついた。




「そっか」



そう言って、私の頭を撫でる。





「ねぇ、ジュースでも飲んでから帰ろうよ」





どうせ暇でしょ、と失礼なことを言った。




「何ジュース?」





「りっちゃんが好きなの」





仕方ないなぁ、とそっと手を離して、自転車から降りる。





そのままチャリを停めてコンビニに行く。





「やっぱりっちゃんは抹茶オレ?」





疑問口調で聞いて来たくせに、ほぼ確信しているかのようにそれを手に取る。





「なんで知ってんの?」





「りっちゃんが忘れてるだけ」





そう言って笑って、自分の分を手にとって、レジに向かう。





「え、まって、」




先に行かないでよ。





そそくさと歩いて行ってしまうりっくんを追いかけようとする。




「りっちゃんはその冷蔵庫に顔でも突っ込んで涼んでなよ」





「…は?」




足が止まるほどに、意味がわからない。





その間に、りっくんは会計を済ませてしまった。





何食わぬ顔をして、行くよーと号令をかける。





「2階にフードコートあるから」




袋を片手にぶら下げて、私の少し前を歩く。






着いたら、お金返そう。





そう思って、少し走って隣に並んだ。




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