こんな私が、恋したみたいです。
ドアが開いたら1番にホームに降りて、電話を掛ける。
声が、聞きたい。出来れば、今すぐに会いたい。
もう会えないような不吉な感じがするのは、なんで?
りっくん、知ってる?
《着いた?》
背後でごそごそと音がするけど、確かにりっくんの声がする。
「うん、着いた」
ピッと、改札が音を立てた。
《本当に着いたばっかじゃん》
ケラケラと、いつもみたいに笑う。
「へへっ」
だから、私も笑ったら、りっくんがあくびをした。
《さっきまで寝てたんだよね》
「え?」
《りっちゃん遅すぎて》
そんなすぐに家に着いていたのかと、羨ましくなる。
「ごめんね」
《んー?》
布団が擦れたような音と、りっくんの呑気な声。
「ねぇ、さ」
りっくんと話しても消えないこの不安、知ってる?
《うん?》
「何か、もうりっくんと会えない気がする」
《え?》
呑気だった声が、真面目な声に変わる。
「もう、二度と話せない気がする。あやのちゃんとも、もっちとも」
《あー、》
ごろっと、寝返りを打ったようだ。
《俺がりっちゃんを無視し始めたの、りっちゃんが夢で見たラーメンの次の日だからじゃない?》
「どゆこと?」
真剣な声に、圧倒されそうだ。
《あの日、俺めっちゃ楽しかったし、多分りっちゃんもめっちゃ楽しかった。だから、楽しかった日の後はそうなるんじゃないかってりっちゃんの中のどっかが心配してるんだよ》
ふーん、と、乾いた声を出したけど、納得できた。
《心配しないで。もうそんなことしないし、絶対明日も迎えに行くよ》
凛とした声。
「うん。絶対ね」
モヤモヤが消えたよ。
《おう》
ヘラって笑ったから、私も笑える。
「家、ついちゃった」
《そっか。切る?》
その声がなくなっちゃうのは、嫌だけど。
「うん」
迷惑はかけたくなくて、苦し紛れに頷いた。
《おう。じゃ、また夜かけるかも》
「わかった!!」
ちょっと元気すぎちゃって、りっくんがハハッと笑う。
《そこまで言われたらかけるしかないわ》
「そーして!」
わかった、と言ってくれて。
嬉しくて。
じゃあね、と言って、機械音が聞こえても、まだウキウキしていた。