こんな私が、恋したみたいです。
「ひぃ」
可愛くない声が出て、口に手を当てる。
「疲れたー!!」
あやのちゃんは部屋のど真ん中に寝そべって、楓先輩はあやのちゃんを飛び越えて部屋の隅っこで化粧品落とし。
「りっちゃーん、おかし食べよー」
首だけひょいと私に向けて、ニコッと笑う。
「やめとけってあやのちゃん。ご飯だよ。特盛だよ」
鏡の中の自分を見ながら、楓先輩がそういう。
「えー、食べたくないですかー?」
「てかあやのちゃん、まさかと思うけどその袋全部お菓子?」
あやのちゃんは、アメフトバックとキャリーケースの他に大きな袋を持ってきた。
「よくわかりましたね!広げましょうか!?」
「結構です」
そう言って笑う楓先輩を無視して、あやのちゃんはじゃじゃーん!と袋をひっくり返した。
「…りっちゃん、トイレ行こ、トイレ」
「そう、っすね」
あまりのチョコの多さと、スプライトの多さに驚愕して、早速袋を破ろうとしてるあやのちゃんをよそに部屋を出る。
「ねぇ、いいこと教えてあげる」
合宿所は、今にも壊れそうなベニヤ板一枚の小屋だから、トイレに行くには外に出なくてはならない。
「なんですか?」
「こっちこっち」
トイレとは逆側の、まだ来たことのない館に入った。
「あったー!」
見つけたのは、冷蔵庫。
「去年もここにあったんだよねー、使えたし」
よっこらせ、とそれを持ち上げて、持って帰ろ、と私に言う。
「半分、持ちます」
あやのちゃん、きっと喜ぶ。
だって、スプライトは冷たい方が美味しいし、チョコだってこんなに暑かったら溶けちゃうもん。