こんな私が、恋したみたいです。
「はいそれではりっちゃんに質問です!!」




降りたと思ったら、私を振り返る。





「なんでしょう」





「ここからくじを引いてください!」




ポケットから出てきたシワシワのビニール袋に笑いそうになりながら、その中に手を突っ込んだ。





「てか、それ質問じゃないよね」





数枚ある中から1枚を選んで出した。





あはは、と笑うりっくんに、開かずにそれを渡した。





「なんのくじなの?」




「秘密でーす!開けますよー」




はい!っと破れそうな勢いでそれを開いて、パァッと笑顔になる。





「はじめは映画です!」





「…ん?」





マジックペンで映画!とわざわざビックリマークまで書いてあるりっくんお得意のノートの切れ端を見せてくれた。





「りっちゃんが見たいのあるー?」





よく理解できないけど、話がどんどんと進む。





「んー、これかこれ」




幼稚園生の頃に見るようなアニメの映画版と、ラブコメを指差した。





「何その2択にしといてほぼ決まってるやつ」





「へへっ」




顔を見合わせて笑いながら、チケットの列に並ぶ。




「りっくん、あれで平気なの?」




恋愛ものは、男の子は好かないのではないかと今更不安になる。




「え?だって幼稚園の時めっちゃ見てたし!!」





「え?」





「嘘。平気だよ。兄ちゃんとも弟とも見てたから」




なんだぁ、と力が抜けて、何食わぬ顔して嘘を言ったりっくんに笑った。




「俺、嘘うまくね?」





「うん。詐欺師とか向いてるかも」





よりによって犯罪かよ、なんて笑っていたら、長いと思っていた列はすぐだった。




隣の席のチケットを買って、人まみれで暑い空間から抜け出す。




「あと30分かー」




何しよっか、と言われて何する?と聞き返した。





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