こんな私が、恋したみたいです。
「んー、腹は?」




「空いてない」




即答して、お互いに笑いあった。




「じゃあー、付いて来て!」




さりげなく私の手を引いた。





「え、え、」





指先に心臓が移動したかのように、ドキドキと音がなる。





「急ぐよ!」




そんなことを言いながら、普通に歩いているように見える。




私は、こんなに駆け足なのに。






ねぇ、もしかして、いっつも歩幅合わせてくれてた?



「あーよかった。あんま並んでない」




ふぅ、と汗を拭う仕草をした。





「えっと…」




ここは、えっと。





「屋台!」




「それは見ればわかる」




なんの屋台か聞いているんだ。このピンクピンクした煌びやかな屋台は。





「何にするー?」




掲げてあったメニューを見た。





「んー」





呑気な声を出して、それを見る。




ジュースのようだ。





「どうせなら、そこらへーんで買えるやつ買って飲むよりこっちのがよくない?」





私を見たのが横目で見えたから、私もりっくんを見る。





「あ、…そう、だね」




思ったより近くて、すぐにメニューを見直した。




ドキドキが、ましちゃうよ。






「えー、わかんない」





種類がありすぎて、悩んじゃう。




「じゃ、りっくんセレクトでいい?」




またニコニコしてるけど、私はそっちを見ないよ。




「うん。そうして」





りょうかーい、と呑気な声を出して、会計をしてくれた。




「あー!あと10分!」




やばいやばい、と少し雑に私に1つを渡して、またスマートに手を握る。




「こぼさないでね!」




りっくんじゃないんだから、そんなドジしないよ。




心の中で楯をついたけど、口に出すほどの余裕はない。





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