こんな私が、恋したみたいです。
ギリギリで間に合って、チケットを手渡す時に手が離れた。




ちょっとさみしい。だけど、心臓が持たないからこれでいいかもしれない。




「…え、」





階段を少し前を登るりっくんが、私の方を見ずにまた私の手を取る。




「りっ、くん」




やめて、なんて言えない。だけど、恥ずかしくて、ドキドキが止まらなくて、やめてほしい。




あぁ、もう何言ってんだ私。




さっきの、聞こえてませんように。





「ん?疲れた?ごめんね」




「うるさい」




息の音しかしない小さな声だったけど、私の声を拾ったことが気に食わなくて可愛くないことを言う。





ごめん、とへらっと笑ったりっくんは、ほぼど真ん中の1つの席の前に立つ。





「りっちゃんこっち」





自然と手が離れて、私を反対側に誘導した。




わざわざ、りっくんを通り越す意味がわからないけれど、文句も言ってられないので言われた通りにする。




楽しみだなぁと、私以上にワクワクした目で画面を見ていて、またドキドキして、それ以上に幸せになれた。





< 532 / 549 >

この作品をシェア

pagetop