ごきげんよう!豪腕丸!
推参!豪腕丸!
プロローグ                                     


草の根一本見当たらぬ乾いた大地からは、死の香りがした。
凄惨な現実から目を背け、空を仰げば、そこにはおどろおどろしい光景が無限に広がる。
辺りには、紫がかかった怪しげな霧がたちこめている。
絶望と、終わりを知らせる毒々しい霧が。
全てが無に帰したと思われた地に、突如、小さな地鳴りが響く。
そして、地平線の果てには人影が一つ。
地鳴りは一定の間隔を保ちながら響き、徐々にその音量を上げていく。
地鳴りが大きくなるのと比例して、人影もまた大きく、大きくなり、こちらへと近づいてくる。
そう。この地鳴りは、足音である。
力強く一歩を踏みしめながら、終わりの大地を目的を持って進む命あるもの。
身長、推定3メートル!
腰まで伸びた長髪はお花のあしらわれた桃色のゴム紐でまとめられ、身に纏っている今にもはち切れそうなセーラー服から伸びる浅黒い腕と脚では、筋肉という名の鎧が静かに脈打ち、来るべき時を待っていた。
その風貌は一見霊長類、しかし!熊とも、はたまた岩山ともとらえられるほどに巨大な姿をしていた。
教えよう。彼、いや、彼女の名は

「豪腕丸」!!!!


厳かな顔から時折見え隠れする憂いの表情は乙女の証。
大和撫子の精神を受け継ぐ彼女の心で揺らめく大火は、正義を火種に燃ゆる炎!
その豪腕は悪しき者たちに制裁を加えるためだけのものではない。
慈悲の心で、全てを抱きとめる愛の豪腕である!
豪腕丸ははたして、この世界で何をなしとげたいのか。
その答えは、豪腕丸が足を止め見据える、目の前の巨塔にあった。
更地にそびえる仰々しい煉瓦造りの塔。
周りは、豪腕丸よりもはるかに高い柵で覆われている。
豪腕丸の前にある唯一の入り口には木の看板が立てかけられていた。
看板には、筆で豪快にこう記されていた。

「入学式」

「学」校に「入」る「式」
つまり、入学式!
ここは、現代の学校である!
豪腕丸、15歳。
本日彼女は、高校生になろうとしていた!

「聖・力学園(せんと・ちからがくえん)」!

それが、豪腕丸がこれから三年間通うことになる学校の
名前である!!


< 1 / 2 >

この作品をシェア

pagetop