君は世界を旅してる

「私は早川くんのことが好きよ」

あ、言われるだろうなと思ってたことを言われた。そう頭の片隅でぼんやりと思った。

島崎さんはとても堂々としてて、ハッキリした口調だった。
自信を持ってその言葉を口にした、そんな印象を受けた。

「でも早川くんはあなたのことが好きなのかもしれない。今まで誰か1人の女の子に寄っていくことなんてなかったのに、あなたを特別視してるように見えるもの」

「そ、そうなの?」

「だからこそ」

突然、島崎さんの口調が強くなった。
驚いて思わず体がびくっと動く。これじゃ、島崎さんを怖がっているみたいだ。実際ちょっとびびってるのかも。

「中途半端なあなたの態度にとても腹が立つわ。あなたは早川くんのこと、好きそうになんて見えないもの」

「!」

中途半端な態度。
そう言われて、はっとした。
確かにその通りで、告白してくれた早川くんが返事はまだいらないと言ったことに甘えていたような気がする。

「あなたも早川くんのことが好きなら、別に私は何の文句もないわ。悔しいけど仕方ないから。だけど今のあなた見てると、私は自分の気持ちをどうしたらいいのかわからない」

「島崎さん……」

「早川くんって女の子にすごく人気があるけど、本気の子ってそんなにいないの。理由は、早川くんも本気にならないからよ」

確かに、早川くんはすごくモテる。だけど特定の誰かと付き合うことはないみたいだった。
それがわかってるから、みんな早川くんを本気の恋愛対象としては見ないのかもしれない。

「だけど私はずっと好きだった。吹奏楽部で初めて話したときから。でも告白する勇気がない自分のことが嫌で仕方なかった」

片側だけ耳にかけている島崎さんの髪が、少しずつパラパラと落ちる。
きっと島崎さん、今まで誰にも相談せずに悩んでたんじゃないのかな。


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