君は世界を旅してる
2人きりの第3音楽室に、島崎さんの声が響く。それはとても真っ直ぐに、私の心に突き刺さってくる。
「だからあなたのことは腹立たしいけど、少しだけ感謝してるのも本当」
「……え?」
「誰かに取られる前に、頑張って勇気出してみようかなって思えるようになったから」
そう言った島崎さんの表情はとても凛としていて、綺麗でかっこよかった。
自分にはないものを持っている島崎さんが、羨ましく思えた。
島崎さんのことを苦手だと思っていたのは、この子のことをまだよく知らなかったからだ。
これからよく知っていけば、きっと仲良くなれる。
「まあどちらにせよ、さっさと態度をハッキリさせてくれない?」
「う、はい、ごめんなさい……」
仲良くなれる、と思う。
たぶん……。
思えば今まで、ちゃんと早川くんと向き合ったことってなかったかもしれない。
告白を受け入れるでも断るでもなく、一緒にいることを歓迎するでも拒否するでもなく。
早川くんはそんな私のことをどう思っているんだろう。
そもそも、果たしてどこまでが本気なのか。
すっきりした顔の島崎さんが、ひとつひとつ楽器を眺めながら歩いている。
その目は、早川くんの笑顔と同じくらいキラキラしていたし、一条くんが卵焼きを手に入れたときと同じくらい楽しそうだった。