君は世界を旅してる

次の日、私は早川くんの靴箱に手紙を入れた。

”話があるので、放課後第3音楽室に来てください。”

そう書いて、自分の名前は書かなかった。
だけどそれだけで、きっと早川くんは私からの手紙だとわかるだろう。
その証拠に、早川くんは昼休み、私のところに来なかった。


その日の授業中、放課後のことばかり考えていた。
どう言おうか。
何て切り出そうか。

頬杖をついて考え込む私を見て、千尋が後ろからこそっと声をかけてきた。

「ねえ真子。体調悪いなら保健室行ってきたら?」

「え?元気だよ全然」

「ならいいけど。そのうち怒られるかもよ?」

千尋の言葉がどういう意味か考える間もなく、頭の上にふっと影がさした。
何かと思って見上げると、先生が私を見下ろしていた。

「お前は……」

「あ、」

「いつまで寝こけてるつもりだ!!」

怒鳴り声に目をぎゅっと瞑る。
寝てはいなかったよ先生!
心の中でそう言ってみるものの、口には出せなかった。

「さっきから何回も注意されてたのに、全部スルーしてたよ。真子もなかなか強者ね」

「……もう少し早く教えてほしかった……」

そうしてありがたいことに、放課後居残りで先生の手伝いをさせられるはめになってしまったのだった。

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