君は世界を旅してる
そうして、早川くんが手伝ってくれたおかげでかなり早く終わらせることが出来た。
「ありがとう!すごく助かった!」
「僕が手伝いたかっただけだから。役に立ててよかったよ」
「じゃあこれ、職員室に持っていってくるね」
そう言って立ち上がった私の手を、早川くんがパシッと掴んだ。
「まだいいじゃん。せっかく早く終わったんだからさ、少し話そうよ」
「あ……」
そうだ。きっとそれがいい。
もう一度椅子に座りなおして、プリントを机の上に置いた。
早川くんは、私が何か言い出すのを待っているように見える。
何を言うつもりで呼び出したのかを、きっとわかってるんだろう。
島崎さんとのやり取りを思い出す。
中途半端な態度は、もう終わりにしよう。
「早川くんはね、」
「うん」
「本当に私のこと、その……好きなの?」
そう尋ねると、早川くんはふっと小さく笑った。
「……好きだよ。すごく」
胸がぎゅっと苦しくなった。
誰かのことを好きだと素直に口にするのはどれだけ勇気がいるのかを知ってる。
好きになったから辛いことだってある。
千尋や島崎さんを見てきて、本当にそう思ったんだ。
「……あのね早川くん。私は、」
「一条のことが好き?」
「!」
しっかりと目をみてそう言われて、言葉を失った。