君は世界を旅してる
「だけど真子ちゃんと一緒にいるうちに、だんだん好きになっていった。これは本当。信じてほしい」
「うん、もう疑わないよ」
「はは、ありがとう。真子ちゃんってほんと素直だよね」
素直?私が?
そんなことない。
私はお母さんのことを知るのが怖くて逃げ出すような人間だ。
一条くんともまだ少し気まずいまま。
離れることも一緒にいることも怖いなんて。
早川くんは教卓の上に飛び乗って、足をプラプラさせてる。
背の高い早川くんだからそんなに簡単に出来るんだろうなと思った。
「早川くん、聞いてもいい?」
「うん?」
「早川くんは、一条くんのこと嫌いなの?」
すると、早川くんはうーんと唸りながら首を傾げた。
「そうだなあ…。僕と一条の関係は知ってる?」
「同じ中学だったってことしか……」
「そうそう。あいつはね、中学のとき男子からも女子からも人気者だったんだよ」
「えっ?」
そうだったんだ。
知らなかった一条くんの過去に、だけど少し納得した。
今でこそ、自分から1人になってる一条くんだけど、普通に過ごしてたらきっとモテるだろうと思ったから。
「もちろん、僕もそれなりに人気者だったんだけどね。一条はそれ以上だった」
さらっと冗談っぽくそんなことを言う早川くんに笑いそうになった。
だけど実際のところ、本当のことなんだろう。
「それがある日突然、あいつは誰ともつるまなくなったんだ」
「ある日、突然……?」
じゃあ、一条くんが今の状態になったのは中学生の途中からだということか。
「仲良かった奴らとも一切遊ばなくなって、休み時間も放課後もとにかく1になりたがってた。誰が聞いたって理由は教えてくれなかった」