君は世界を旅してる

「”お腹の子の父親は誰なの”っていくら聞いても、”今は会わせられない”ってそればっかり。周囲の反対を押し切ってあなたを産んだのよ」

そのときのお母さんの決意は、どんなものだったんだろう。
色々と、胸に込み上げるものがあって苦しい。

その覚悟があったから今私はここにいるのに、邪魔だと思われてるだなんて、少しでも考えた自分が恥ずかしい。
分裂して自分をぶん殴りたい気分だ。

「じゃあおばあちゃんは、私のお父さんがどんな人か知らないの?」

「美佳子の写真とか、色々見てみたんだけどねえ。それらしい人は見当たらなかったよ」

「写真?それってまだこの家にある?」

「ええ、あるわよ。美佳子が家を出て行くときに持って行かなかったから」

もうこれしか残された手がかりはない。
藁にもすがる思いで、その写真を見せてもらうことにした。


元々お母さんが使っていたらしい部屋に通してもらって、おばあちゃんがアルバムをいくつも広げてくれた。

「飽きるまで見てたらいいよ。おばあちゃんは居間にいるから、終わったら声かけてちょうだい」

「ありがとう」

ひとりっ子のお母さんは、写真の数がとても多い。
その中にはかなり色あせてしまっている写真もあって、時の流れを感じさせた。

お母さんが高校生の頃の写真を見つけた。セーラー服を着て、髪を2つに結んでいる。
確かに、少し自分に似ているかもしれない。

初めて見る自分の母親の子供時代。
この頃には、きっと私を産むなんて想像もしてないんだろう。
そう考えたら、まるで自分の存在が奇跡みたいに思えた。

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