君は世界を旅してる
いくつも写真を見ているうちに、もうわからなくてもいいんじゃないかと思えてきた。
前みたいにネガティヴな思考からじゃなくて、自然とそう思えるようになったのだ。
こうやって、お母さんの幸せそうで楽しそうな過去の思い出を何枚も何枚も見ることが出来た。
周囲の反対を押し切ってまで、私をこの世に存在させてくれた。
全部、あの手紙の謎を解明したいと思わなければ、知ることのなかった真実だ。
こんなに温かい気持ちになれるものをたくさん知ることが出来た。
それだけで、一条くんと今まで追いかけてきたことにはすごく価値があると、思えるようになった。
最後に、1番新しそうなアルバムに手を伸ばす。
社会人のお母さんの姿。この家を出る直前までの思い出が詰まっている。
パラパラとめくりながら、写真の中のお母さんと同じように笑ってみた。
今、どこかで幸せに過ごしているなら。
私も、ここで幸せに過ごしていけたら。
アルバムの中の最後の1枚は、大きなお腹のお母さんが笑ってピースしてる写真だった。
「……これだけ、もらっちゃおうかな」
唯一この写真だけ、私とお母さんが一緒に写っているのだ。
そっとアルバムから抜き取ると、ヒラっと何かが床に落ちた。
どうやら2枚重なってしまってたみたいだ。
「………え?」
床に落ちた写真を拾いあげようとして、思わず手がとまった。
見てはいけないものを見てしまったような気がして、だけど釘付けになった。
この写真は偶然2枚重なってしまったんじゃない。
わざと、隠すように重ねてあったのだ。