君は世界を旅してる
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「こらー!広野!走るなバカ者!」
「ごめん先生!あとで」
「あとで歩いても許さん!」
朝1番の廊下を駆け抜ける。
この感覚は久々だ。
早く会いたい、早く話したい。
周りの目なんてどうでもいい、先生に怒られたっていい。
早く、4組へ。
ドアに手をかけて、ガラッと思い切り開く。
「いっいち、いちじょ、」
「あれー!真子ちゃんだ」
「はぁ、あれ?早川くん……?」
開いたドアのすぐそこには、早川くんが立っていた。
息を整えながら返事をする。
「一条ならまだ来てないよ。なにか急ぎの用事?」
「そう、なんだ。じゃあいいや、やっぱり放課後にする」
そのほうがゆっくり話が出来るだろう。
また出直すことにして、早川くんに手を振った。
「あ、待って。じゃあ一条に伝えといてあげるよ。放課後真子ちゃんが用事あるみたいだよって」
「え、いいの?」
「それくらい。……うまくいったら教えてね」
こそっとそう言ってきた早川くんは、なんだかニヤニヤしてる。
なんの用事だと思われてるんだろうか……。
私からの用事なら、きっと一条くんは何も言わなくても屋上に来てくれる。
早く話したい。早く会いたい。
屋上へ向かう階段を、頭の中で駆け上がって、扉を開けた先を想像する。
今日の空はどんなだろう。