君は世界を旅してる
「おはよ、真子」
「千尋おはよう。はいこれ、この前のお礼ね」
千尋の机にミックスジュースを置いた。
千尋は、なんのことかと言いたげに目をパチクリさせている。
「ほら、ジュースと引き換えにお願いごとしたでしょ」
「……ああ!この前の早川くんに放課後行けなくなったっていう伝言?すっかり忘れてた」
「えー、じゃあ買って来なくてよかったじゃん」
「へっへー、ありがたく頂戴します」
嬉しそうにジュースを飲む千尋を見て、すっかり元気そうで安心した。
手首の痣はもう綺麗に治っている。
「それで、あの日は早川くんに何の用があったの?」
「え?……いや、その」
「まあ、なんとなくわかるけどねえ。早川くん、真子のこと好きっぽかったし」
さすが、いつも一緒にお昼を食べていただけある。
告白されて、ちゃんと断っていないことまで千尋にはバレていたようだった。
「真子は他に好きな人がいるもんね。ね!」
「そこまでバレてるの!?」
「あ、自白した」
「はっ」
やられた。
とはいっても、きっと千尋には何もかもお見通しだ。
それが一条くんだってことも、何も言わなくても知ってるだろう。
「告白しないの?」
「うん……もうちょっと……」
「なにそれー!もう、こっちがイライラするわ」
千尋はどかっと椅子にもたれかかるように座って、わざとらしく盛大に息を吐き出した。
そんなこと言われても、こっちにも色々あるのだ。
心構えとか、気持ちの整理とか、覚悟を決めるとか……。って全部一緒か。