君は世界を旅してる
「でもそのプロポーズ、確か断ったんだよね?おばあちゃんも結婚しなかったって言ってたし。それにしては、2人とも幸せそうな顔してない?」
「まあな。……おばあちゃん、他には何か言ってなかったか?」
うーんと考えてから、大事なことを思い出して手を叩いた。
「そうだ、お母さんがプロポーズを断った理由、わかったかもしれない」
「ほんとか!?」
「お母さん、子供の頃は身体が弱かったんだって。それが再発したら怖いから、結婚は諦めてたみたいなの」
「へえ。広野は知らなかったのか?」
「うん。おばあちゃんの話だと、大人になってからはもう心配いらなかったみたいだし。妊娠して、私のことは産むことにしたみたいなんだけど……」
「……なんかしっくりこないな」
一条くんも私と同じように感じたらしい。
結婚しなかった理由がそれだけだと、どうしても思えないのだ。
なにか手がかりはないかと、写真の中の2人をよく見る。
20代前半のお母さんは、私が最後に見たお母さんよりも髪が長かった。それに、しわも少ない。
こんなこと言ったら怒られるだろうなあ。
ふと、気になっていたことを口に出してみた。
「……教授とかだったのかなあ」
「は?」
一条くんがキョトンとした顔をした。
「これ」
男の人の服装を指差して、一条くんによく見えるように写真を動かした。
古い写真だから色褪せてわかりにくいのだ。
「男の人が着てるのって白衣だよね」
「…そう言われてみれば、そう見えるけど」
「何かの研究してるとか、科学の先生とかかなあ?」
「………そうか」
一条くんが何かに気付いたように、ハッとした声を上げた。