君は世界を旅してる
「お母さん!!」
ベッドに横たわる姿に駆け寄った。
私のお母さんだ。約4ヶ月振りに会えた。
目を閉じてよく眠っている姿を見ていると、涙が溢れた。
最後に見たときより、少し痩せてる。
顔色もあまり良くないようだ。
手を握ってみると、ちゃんと温かくてほっとした。
だけど一向に、目を覚ます気配はなかった。
「1ヶ月前に、大手術をしたんだ」
楠木さんが私の隣に立って、お母さんの顔を見下ろした。
「無理だと言われてた手術だった。どうせ助からないから、しないほうが良いんじゃないかと言われてた」
「助からない…?」
「それくらい大変な状態だったんだ。気付くのが遅くてかなり進行していた。それでも、手術することを選んだ。1パーセントでも可能性があるなら挑戦したいと言ってね」
「そ、それでどうなったんですか!?」
楠木さんは、少しだけ口元を緩めた。
「手術は成功したんだ。みんな奇跡だと言っていたよ。……だけど見ての通り、未だに意識が戻らないんだ」
喜ぶべきなのか、悲しむべきなのか、よくわからなくなってしまった。
目の前のお母さんは眠ってるんじゃない。意識がない。
いつになったら目を覚ますのか、いつかは目を覚ますのか。
「………ずっとこのままなの?」
こんな酷いことがあってたまるかと、唇を噛んだ。
探して、こんなにも探して、やっと見つけたんだよ。それなのに。
「眠ってる顔しか、もう見れない……?」
悔しくて悔しくて、手が震えた。
足の爪先から、恐怖心がぞわぞわと這い上がってきて、蝕まれていくような気分だ。