君は世界を旅してる
「それはわからない。もしかしたら目を覚ますのは、まだまだ先かもしれない。だけどもしかしたら、明日には。いや、1時間後には目を覚ますかもしれない」
「そんなの……!」
「胸元を見てみなさい」
楠木さんが、かけられてる布団を少しめくって、お母さんの胸元を指差した。
言われた通りに見てみると、そこは微かに、上下に動いているのがわかった。
「呼吸をしてる。……生きてるんだよ」
「………………っ、」
胸が苦しくて、思わず自分の服を握り締めた。
まるで膨大な量の”感情”が、胸に詰まって爆発してしまいそうなほど。
次から次へと思いが、思い出が溢れかえって、それを外へ追い出すように、涙が止まらなくなった。
今、わかった。
お母さんは、私にこんな気持ちになってほしくなかったから、本当のことを言えなかったんだと。
だけど奇跡を信じて、少しの可能性にかけて手術をした。そのおかげでこうして生きてる。
立っていられなくなって、ベッドの側にしゃがみ込んだ。
自分の中で、気持ちの整理がつくまで、声を上げて泣き続けた。