君は世界を旅してる
そんな一条くんは最近、前と少し変わったことがある。
「一条、早く移動しないと遅れるって」
「……お前ら先行ってていいから」
「何言ってんだよ、ほら行くぞ〜」
クラスメイトに手を引かれて、一条くんが面倒くさそうに教室を移動していた。
「ね、真子。あれ一条だよね?1人でいるのやめたのかな」
「うん、どうしたんだろうね」
千尋が興味深そうに尋ねてくるけど、私だって驚いてる。
あえて1人になりたがってたあの一条くんが、ここ最近誰かといることが増えたのだ。
友達は私1人だと思ってた。
だけどきっと、もう今は違う。
きっと一条くんなりに、何かを乗り越えたんだと思う。
すごく良いことなのに、ちょっと寂しいと思う自分がいる。
一条くんのことを、一人占めしてたかったのかもしれない。そんなこと、無理に決まってるのに。
なんだか最近は、一条くんがすごく遠く感じる。
置いて行かれてるみたいだ。
「……まだ告白しないの?」
「え!?」
「誰かに取られても知らないよ?」
千尋は意地悪だ。
私が今1番心配なことが何か、わかってる。
的確に痛いところを突いてくるのだ。
言われなくてもわかってるよ。
………たぶん。