君は世界を旅してる

その日の6時間目の授業は体育だった。
グラウンドでの持久走の授業を終えて、ヘトヘトになりながら更衣室へと向かう。

「なんで持久走って寒い時期にやるんだろう……。指先の感覚はないのに汗かいてて気持ち悪い」

「高校卒業したらもう二度と持久走なんてやらないでしょ。あとちょっとの我慢我慢」

千尋と2人で文句を言い合いながら着替えをする。
寒い季節は着る物が多いから、着替えにも時間がかかってしまう。

「汗が冷えて寒い!」

「あったかいココア飲みたいねえ」

着替えを済ませて教室に帰ってくる。
もう今日はあと終礼だけだ。帰る用意もしてしまおうと、机の中に手を入れた。

「……ん?」

教科書やノート以外の何かが手に当たった。
机の中から出してみると、紙パックのカフェオレだった。
こんなの買った覚えも机に入れた覚えもない。誰かが席を間違えて入れたのだろうか?

前の席の子に聞いてみようとして、ふと思いとどまった。
もしかして、誰かがくれたのかもしれない。だって私はよくこれを飲んでるから。

くるくると回してみる。
すると、底に文字が書いてあることに気付いた。

”放課後まってる”

そのたった1行だけで、それが誰からなのか、どこに行けばいいのかが伝わった。

いつ入れたんだろう。
まだぬるくない。入れたばっかりかも。だとしたら6時間目が終わって更衣室で着替えてるときだ。

ふと、視線を横に向けた。
窓からはグラウンドが見えている。

窓際1番後ろの席なら、6時間目に1組が体育だったのを知ってるだろう。

そう気付いたのと同時に、自分がどうしようもなく嬉しいと思ってることにも気付いてしまった。

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