君は世界を旅してる
「過去を変えることは出来ない。それは知ってる。だけど俺は未だにあの日に戻って、どうにかやり直しが出来ないか考えてるんだ」
一条くんが1番変えたいのは、大喧嘩してた両親でも、浮気してたお父さんでもない。あの日過去に”行けてしまった”自分なのだろう。
だけど一条くんは、私に協力してくれた。
私にとって一条くんの能力は、人を救うことが出来る素晴らしい力だ。
「私は、気味が悪いなんて1ミリも思わない」
「まあ、そういう人もいるだろうけどな」
「違う。一条くんはわかってない。一条くんのお母さんも何もわかってない。過去にあるのは、人の歴史だけじゃないんだよ」
「………え?」
不思議そうな顔をした一条くんが、悲しかった。
どうしてそうやって、自分のことばかり悪く言うんだろう。
すごくもどかしいし、歯がゆい。
「誰も知らない景色を見ることが出来るんだよ。まだ解明されてない謎だって解ける。あ、ピラミッドを造るところだって見れちゃうよ!」
「………はあ?」
「いつでも好きなときに、ヨーロッパにもアメリカにも、北極にも南極にも行ける!そんなのこの世で一条くんたった1人だよ、きっと」
何を言い出すんだって顔の一条くんが、私を見てる。
無愛想なその目が本当はすごく優しいことだって、私はとっくに知ってる。