君は世界を旅してる
「なんかさ、まるで世界中を旅する能力みたいだって思わない?」
私だったら、一条くんの能力羨ましいって思う。
そんなことを言う私を、阿呆らしいと思うだろうか。
ドキドキしながら一条くんの言葉を待っていると、一条くんがははっと声を出して笑った。
「なんだそれ、アンタらしい。……思わねーよ馬鹿」
「え、ぇええ!?酷い!」
「だけどそんな奴だから、俺も救われたんだ」
一条くんの手が伸びてきて、私の頭にポンと乗った。
一条くん、こうするの好きなのかな。
もちろん私は心臓が大変なことになってるけれど。
「アンタは俺の能力を知った上で、協力してくれと言ってきた。…自分が必要だと言われたような気がして、一緒にいてくれて嬉しかった」
頭の手が、髪の毛を撫でるように降りてくる。
向き合って目を合わせたら、心臓の音がもっと大きくなった。
「だから、もう人の過去には行かないって決めてたのに協力してしまった。青木の変な男のときも、アンタが危ないと思ったら体が勝手に動いてた」
「……あ、大樹さんのことね」
降りてきた手に、私の手をぎゅっと握られた。
一条くんは、私から目を逸らさない。
自分の顔が一気に熱を持った気がした。きっと今私、顔赤い。