君は世界を旅してる
「だって一条くん、こんなときまでかっこよすぎるよ!あはは!」
「っ!」
やっぱり一条くんはかっこいい。
私にとって最高のヒーローだよ。
一条くんとの出会いはものすごく偶然だったけど、あのとき出会ってなくてもきっとどこかで出会ってた。
そう思えるくらい、一条くんはもうなくてはならない存在だ。
これからも隣で、ずっとこうして笑ってたいし、一条くんの笑顔だってもっと見たい。
「私ね、一条くんは絶対にみんなに愛されてると思うんだ」
「…なんだよいきなり」
「名前。澪っていい名前だよね」
そう言うと、一条くんは少し顔を曇らせた。
どうしたのかと顔を覗き込んでみると、恥ずかしそうに目を逸らす。
「…俺はあんまり好きじゃない」
「え、なんで?」
「澪(ミオ)って、さんずい取ったら零(ゼロ)だろ。つまり何もないって意味になる」
驚いた。
どうしてわざわざさんずいを取るんだろう。
一条くんって素直じゃない。
「違うよ。何言ってんの?澪はレイって読めるじゃない」
「は?れい?」
意味がわからないって顔で、もう一度私と視線を合わせる。
一条くんが好きじゃないもの、私のおかげで好きになってくれたらいいのに。