君は世界を旅してる
一条くんとお付き合いを始めてから、お昼は毎日一緒に食べている。
なんだか彼氏と彼女っぽくて、階段を上る足取りはいつも軽い。
「あ、もう来てた」
「おせーよ」
屋上の扉を開けると、真ん中に一条くんが座っていた。
相変わらず毎日コンビニの袋を持ってるけど、だんだんそれも変わっていくような気がした。
いつもいつも卵焼きを取られるから、最近は多めに作ってきてる。
2人並んで座って食べていると、ポケットの中の携帯が鳴った。
こんな時間に電話なんて珍しい。
画面を見ると、お父さんからだった。
「もしもし?今お昼休みだよ。…うん。うんうん。…え?」
手から携帯を落としそうになって、慌てて握り直す。
一条くんが何事かと心配そうにこっちを見ているのがわかる。
「……うそ、ほんとに?…うん、わかった。じゃあ放課後そっちに行くから……じゃあね」
電話を切って、今度こそ携帯を落とした。
「どうした?」
「……お母さん、目を覚ましたって」
「え!ほんとか!?」
信じられない。
まだまだ先になると思ってた。
夢なんじゃないかと、自分の頬を思いっきりつねった。
「い、いたい」
「馬鹿現実だよ!よかったな!」