君は世界を旅してる
ただの、何てことない一冊かもしれない。だけど、調べてみる価値はあるだろう。
「家の中探してみる。見つけたら、一緒に見てほしい」
「わかった。待ってる」
一条くんは力強く頷いてくれた。
「これからはさ、話しかけてもいいんだよね?」
にこっと笑いながらそう聞いてみたら、迷惑そうに顔をしかめられた。
もうちょっとオブラートに包んでほしいものだ。
「そんなに嫌あ?」
「ちが、そうじゃない。けど」
「友達になったじゃん」
「……アンタしつこい」
眉間にしわを寄せて、不機嫌そうに唇をとがらせた横顔は、ちょっとだけ赤く染まってるように見えるのは……気のせいだろうか。
慣れてないんだろうな、と思った。
多分、ずっとわざと1人だったこの人は、友達だなんて。
本気で嫌ならハッキリそう言うタイプの人だと思うし、照れてるだけなんだろう。
そう思い込むのは、おこがましいかな。
素直じゃなくて不器用で、優しくて頼りになるなんて、ちぐはぐすぎてちょっとおかしい。
それでも一条くんとならきっと、ちゃんと本当のことを追いかけていける。
そう思った。