君は世界を旅してる
2.
太陽が眩しい。
「今日あったかいね」
「うん……」
5時間目、体育の授業。
お弁当を食べ終えてからの、ぽかぽかとした陽気の中でこれは。
「眠い………」
「ちょっと大丈夫?顔色悪くない?」
「や、大丈夫。寝不足なだけだと思う」
バレーコートの中で走り回るクラスメイトを、少し離れたところから千尋と並んで見守りながら欠伸をひとつ。
足元に転がってきたボールを拾うためにしゃがんだら、そのまま地面に手をついて眠ってしまいたくなった。
「寝不足?珍しい。夜何してんの?」
「いやあちょっとね……、探し物を」
またひとつ欠伸が出た。
一条くんに連れて行ってもらった、約半年前の4月5日。
そこで新たな手がかりを得た。
とりあえずあの本を確認してみようと、家の中を探し回ってもう3日がたっている。
どこにも見つからないのだ。
深い青色をしたハードカバーに、金色で印刷された文字。厚みは3センチほどあっただろうか。
すぐにでも見つかりそうな外見なのに、どこを探しても見当たらない。
もしかしてもう家の中にはないのかもしれない。
お母さんが持っていってるのかも。とても大事そうにしていたし、十分にあり得る。
そうはいっても今の所その本以外に手立てがないので、諦めきれずに毎日家を漁っているのだ。
「次私達のチーム試合だよ。そろそろ準備……って、ちょっと真子」
「え、なに?」
「今立ったまま寝てたでしょ。もう保健室行っちゃえば?」
「あー、うーん」
それもありかと思っていると、どこかから慌てたような声が聞こえた。
「危ない!!」
「え?」
顔上げると、やっぱり太陽が眩しかった。
反射的に目を細めると、太陽の光が一瞬にして遮られるのが見えた。
あれ、と思ったときにはもう遅い。
バレーボールは、私の頭に見事にクリティカルヒットした。