君は世界を旅してる


学校が終わり家に帰ってきた私は、カバンをソファーの上に投げ出して座り込んだ。

ずっと2人で過ごしてきたこの家は、1人では広すぎる。3ヶ月ほどたった今でも、まだ慣れることはなかった。

天井を見つめながらお母さんの顔を思い出す。
働きながら、ここまで私を育ててくれて高校にも無事に入れて、どれだけ大変だったことだろう。
弱音を吐くこともなく、いつも笑顔だったように思う。

女の2人暮らしで、時には怒られながら、時にはまるで友達みたいに向き合ってきた。
ムカついたことは何回もあった。言い合いの喧嘩をしたことだって、1回や2回ではなかった。
それでも、今ではそれすら出来ないことがとても寂しい。

いなくなる前、お母さんがよく言ってたことがある。
自分の身は自分で守れるように、知識と頼れる人を手に入れておきなさい、だっただろうか。
お母さん自身、それを手に入れて助かることがあったからそんなことを言ってきたんだろうか。それとも、持っていなくて後悔しているからだろうか。
どっちにしても、そう思うようなことを経験してきたんだろう。

「……いまさらなにおもいだしてるんだろ」

ブンブンと頭を振って唇を噛んだ。
今私がしないといけないことは、本を探し出すことだ。

とは言っても、物を隠しそうな場所はもうすべて確認したのだ。
ずっと一緒に暮らしてたんだから、お母さんが大事なものを置いておく場所の検討くらいつく。
他のものとは一緒に保管せずに、それだけもっと見つかりにくい所に置いてるのだろうか?

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