君は世界を旅してる

「やっぱり家の中にはないのかなあ……」

そう呟いてソファーにゴロンと横になった。
背もたれのほうに視線を向けていると、ふと何かが引っ掛かるような感覚がした。
何かを思い出しそうで思い出せないような、そんな感覚だ。

なんとなく立ち上がって、何の変哲もないソファーを見つめてみる。
そういえばこのソファー、随分長いこと使ってるような気がする。
私が小学生の頃だろうか。このソファーが家に来て初めて座った夜、とあるホラー番組をテレビで見た。
たしかそれは、当時の自分にとってはものすごく怖くて、眠れなくて、それからしばらくはこのソファーを見るだけでその番組を思い出していたような……。
懐かしい思い出だ。今の今まで忘れていたけど、いつから思い出さなくなったんだっけ。

そんなことを考えていたとき、昼間の一条くんの言葉が頭をよぎった。

『大事にしまってるだろうな。汚れたりしない場所だ。なおかつ、隠し場所を忘れないような……』

「………あ」

大慌てでその場にしゃがみこんだとき、ソファーの淵に頭をぶつけた。
ついでに、ボールを頭で受けたことまで思い出して顔をしかめた。

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