君は世界を旅してる
バタバタと走る足音が廊下を辿る。
足がもつれそうになって、慌ててペースを落とした。
「おい広野!走るな!」
「ごめん先生!後でちゃんと歩くから!」
「はあ!?後で歩いたって今走ったことは無しにならんだろうが!」
先生の叫び声を背中に浴びながら走り続ける。
正門をくぐって靴を履き替えたあと、そのまま自分の教室を通り過ぎて、4組の教室の前でようやく足を止めた。
ドアをガラッと開けたのとほぼ同時に声を出していた。
「一条くん!」
朝のHRまでもう少しといった時間、ほとんどの生徒が既に登校しているようで、教室の中はざわざわとしていた。
…はずが、どうやら自分で思うよりも大きな声が出ていたらしい。
途端に静かになったと思ったら生徒達の視線が私に集まっていた。
「……えっと」
なんだか気まずい空気の中、窓際の1番後ろの席に目を向けると、一条くんはもう登校してきていた。
へらっと笑いかけてみせると、思いっきり睨まれてしまった。
他の生徒達は、不思議そうに私と一条くんの顔を交互に見ているみたいだ。
実は友達なんです、私達。
近付こうと、教室の中へ足を踏み入れた瞬間、ガタッと音を立てて一条くんが立ち上がった。
そして視線を下に向けて、ズンズンという効果音がぴったりな歩き方で私の方へと歩いてきたのだった。