君は世界を旅してる

「いつもそうなの?」

パン2つとコーヒーを取り出す手元を見つめながらそう尋ねた。

「そうって?」

「お昼ごはん。コンビニで買ってくるの?」

たまごが挟まったパンの袋をびりっと破いて、一条くんが手を止めた。

「まあ、そうかな。朝学校来る途中のコンビニでいつも買う」

そうなんだ。
小さくなった私の声は一条くんの届いたのかわからなかった。
もしかしたら、あまり聞かれたくないことだったかな。一瞬、一条くんの顔が強張ったような気がしたから。

勝手にあれこれ想像するのも良くないだろう。
自分のお弁当箱を広げて手を合わせた。
今日の卵焼きはなかなかの出来栄えだ。昨日のは少ししょっぱかった。

一条くんと2人で過ごす時間が少しずつ多くなった。
こんな風に並んでご飯を食べる日がくるなんて、ついこの間までは考えもしなかった。
隣に一条くんがいる。そう思うと、箸を持つ手が少しだけ緊張してしまった。

「で?話の続きは?」

「え?」

「本の話だよ。その為にここに来たんだろーが」

「あ、そうだった」

「おい。俺がここに来た意味なくなるだろ」

胸がちくっと痛んだような気がした。
ただ一緒にご飯を食べるためだけにここに来たんじゃない。わかってるけど、そんな風にはっきりと言われるとちょっとだけ悲しくなってしまった。
自分勝手な感情だ、これは。

「あはは、ごめんね?」

「謝るくらいなら、その卵焼き1つくれ」

「えっ」

びっくりして一条くんの顔を見ると、私のお弁当の中身をじーっと見つめていた。

「欲しいの?これ」

「うん。欲しい。うまそう」

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