君は世界を旅してる
3.


「あれ?」

靴箱の中に見覚えのないものを見つけて、声が漏れた。

冬が迫ってきているのを感じる。
朝、家を出たときの空気がだんだんと冷たくなってきて、それに澄んできているような気がする。

時間が経っていることを、嫌というほど思い知らされて悲しくなる。
それは、時間が経てば経つほど、もう二度と会いたい人に会えなくなる確率が高くなると、心のどこかで思っているから。

それでも、夏のあの日以来、朝が来るのが憂鬱で仕方なかったのが、少しずつ回復しているのが自分でわかる。
理由は傷が癒えたからとか、忘れてきているからとかそんなものじゃなくて、憂鬱さや悲しさを和らげてくれる存在が出来たから。

だから学校に来るのも、前よりも億劫じゃなくなってきている。

そうして今日もいつもと同じように登校して、靴箱に手を伸ばして上履きを引っ張り出したとき、そこに見覚えのないものが乗っかっていた。

「手紙?」

ルーズリーフを小さく折ってあるそれは、授業中に友達と回しあった手紙を思い出させた。
とりあえず靴を履き替えてから、あまりにも気になったのでその場で開いてみることにした。

「えーと、広野真子さんへ。話があるので、放課後、第3音楽室まで来てください………」

これは、もしや。
ルーズリーフにはそれだけが書かれていて、差出人の名前は見当たらなかった。
筆跡を見ても、女子か男子か判断出来ない。
普通に考えると、ラブレターというものだと思うけど。それを裏切るように、私を憎む女の子達からの呼び出しという展開もありえる。

相手がわからないので何とも言えない。これは呼び出し通りに行ってみるしかなさそうだ。

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