君は世界を旅してる

「僕のこと好きになって、ね」

そんな強烈な言葉を、にこっと微笑みながら早川くんは言い放った。
かあっと、自分の顔が熱くなるのを感じた。至近距離でそんなことを言われたら、きっと誰だってこうなると思う。
そんな私の表情に満足したのか、より一層にこにこ笑った早川くんが背筋を伸ばして、私から離れた。

「じゃあ、今日はありがとう。またね」

ひらひらと手を振って、早川くんは音楽準備室を出ていった。
扉が閉まる音を背中で聞き終わってから、力が抜けたようにその場にしゃがみこんでしまった。

びっくりした。
まさか本当に誰かに告白されるパターンだったなんて。
しかもそれが、人気者の早川透くんだった。

でも何か納得いかない。
不思議とあまり嬉しくなかった。上手く言えないけど、おちょくられたような気分だった。
そもそも、彼に好かれる理由が自分に見当たらないのだ。

だけど。

”そんなにじーっと見られると、ちょっと……”

そう言ったときの早川くんの顔が、耳まで赤く染まってたのを見てしまった。

「仲良く、かあ」

これから女の子達に恨まれる展開にならなきゃいいけど。
そう思いながらゆっくり立ち上がって、私も帰ることにした。

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