君は世界を旅してる
「……どうしよう」
「聞かれたら否定したらいいんじゃないの?そのうち収まっていくでしょ。……ああ、それと」
「え?まだ何かあるの?」
思い出したように手をポンと叩いた千尋を見て、つい怯えたような声を出してしまう。
「私の他にもう1人いたよ。2人が付き合ってるの否定してた人が」
「へ?なにそれ、誰?」
友達の誰かだろうか、そう思って聞いてみると、千尋が今度はにやにやと笑い出した。
こういう顔をした時の千尋は、大抵の場合面白がっているのだ。
「早川透くん。昼休みに真子のこと探しに来たよ。”真子ちゃんは〜?”って聞かれちゃった」
でた。
予測が出来ない早川くんの行動に、振り回されているような気がする。
「その時にね、”広野さんって一条くんと付き合ってるんじゃないの?”って口挟んだ女の子がいたんだけど、”付き合ってないよ”って何故か早川くんがきっぱり」
「あ、そう……」
実際付き合ってないからいいのだけど、どうして早川くんはきっぱりそう言えたんだろう。
一体彼はどこまで本気なのか。
「で、どうなの」
「なにが?」
「一条くんと早川くん、どっちなの」
「はあ!?」
面白そうにそんなことを聞いてくる千尋に呆れた顔をしながら、内心はとてもドキドキしている。
これからどうなっていくのか、自分でも誰かに聞きたいような気分だった。