君は世界を旅してる
今日の放課後は、一条くんと本屋に行く約束をしている。
1人じゃ心細いことを知ってるのか、当り前のように一緒に行ってくれることがすごく嬉しい。
少しの緊張、少しのわくわく。
放課後が楽しみで、自然と授業も頑張れるから不思議だ。
しかも嬉しいことに、6時間目は3年生全クラス合同でのDVD鑑賞だった。
150人ほどが視聴覚室に詰め込まれて、大きなスクリーンで映像を観るだけの時間。
部屋全体を薄暗くするので寝ていてもばれないので、こういう授業はとても好きだ。
休み時間に千尋と一緒に教室から視聴覚室へと移動する。
「何のDVDだったっけ」
「あれだよ、たばこの害とか、薬物とかの」
廊下を歩いていると、誰かに肩を叩かれた。
驚いて振り返ると、「よっ」と声をかけられる。
「あ、一条くん。一条くんも移動中?」
「ああ。寝る気満々だけど」
「うん……眠たそうだね」
あくびを噛み殺す一条くんに笑いかけていると、千尋がここぞとばかりに一条くんに絡みだした。
「一条、いつの間に真子と仲良くなったの!?」
「……えーっと、」
「もう!1年のとき同じクラスだった青木千尋!これを機に覚えてよね!」
ぐいぐいと詰め寄る千尋に、一条くんは面倒くさそうな顔だ。
こんな顔されてもひるまないところが、千尋らしいというか。感心してしまうところだ。
「ねえ、せっかくだから3人で座ろうよ!次の時間、席は自由だったよね?」
「……はあ?」
「ちょっと千尋、迷惑かけたら……」
ダメだよと言いかけて、自分もいつも一条くんに迷惑をかけてることを思い出してそれ以上何も言えなくなってしまった。