君は世界を旅してる
「ラッキーだなあ、全クラス合同なんて。あ、後ろに座ってもいい?」
聞いてくるものの、私が返事をする前にもう後ろの席に腰をおろしている。
早川くんがトレードマークのニコニコ顔で手を振っている。
「あれ、一条だ。真子ちゃんの隣ゆずってよ。ね、席代わって?」
「……早川。無理、めんどくさい」
「ええーっ!?」
2人のやりとりにオロオロしていると、6時間目の開始を告げるチャイムが鳴った。
先生がスクリーンの用意を終えたようで、部屋全体が急に暗くなった。
「ほらもう始まるから。大人しく座っとけ」
「あーあ、残念」
言われる通り後ろに大人しく座った早川くんに、一条くんがやれやれという顔をしてみせた。
一条くんはあえて友達を作らないって聞いてたけど、早川くんとは結構話したりするのかな。
会話する雰囲気が自然だったから、なんとなくそう思った。
DVDが始まってしばらく経った頃、隣を見ると一条くんは予想通り寝ていた。
椅子にもたれて腕をくんで、舟をこいでいる。
その姿が面白くて、くすくすと笑いが漏れてしまった。
「真子ちゃん真子ちゃん」
「わっ」
急に、早川くんがぐいっと身を乗り出してきた。
そして一条くんが眠っているのを確認すると、先生に聞こえないくらいの声で話しかけてきた。
「実際さあ、どうなってんの?一条と」
「げほっ」
唐突な質問にむせそうになって、慌てて息を整える。
何故、今。
寝てるとはいえ隣に本人がいるというのに、どう答えたらいいのか。