君は世界を旅してる
放課後になり、急いで靴を履き替えた私は学校の門へと向かった。
そこで一条くんと合流することにしているのだ。
この前みたいに教室に迎えに来るよりは目立たないだろうと話し合ってそうしたのだけど、効果があるのかは怪しいところだ。
「一条くん」
「お、行くか」
既に来ていた一条くんと落ち合って、本屋に向かって歩き始めた。
もうすっかり心地よくなった一条くんの隣を歩いて、これから新しい事実がわかるのかもしれないと思ったら胸がざわついた。
「早川って、広野のこと好きなんだな」
「っ!?」
「さっきの」
さっきの、というのは、多分6時間目のことだろう。
まさか聞かれていたなんて思わなかった。
「お、起きてたの?」
「もしかしたらとは思ってたけど、やっぱりな。俺昨日、あいつに"真子ちゃんと付き合ってないよね"って聞かれたから」
「そうなの!?」
ふと、噂のことを一条くんに話したときのことを思い出した。
何かに気が付いたような様子だったのは、このことを思い出していたんだろう。
「……多分、からかわれてるだけだと思う。告白されたのだって、きっと本気じゃないよ」
「へえ、告白されたんだ」
「あ」
言うつもりなんてなかったのに、うっかり喋ってしまった。
一条くんは特に驚くでもなく、ペースを乱すことなく淡々と歩き続ける。
それがちょっと悔しくて、肩にかけたカバンのひもをぎゅっと握った。
「一条くんって、早川くんとは仲良いの?」
「……まさか」
何故か嫌そうに眉間にしわを寄せて、早川くんは投げ捨てるようにそう言った。