君は世界を旅してる
「お母さんの居場所、知りたくて仕方ないっていうか」
声が震えそうになって、慌てて唇を噛んだ。
後ろで、一条くんが起き上がった気配を感じる。
「じゃあ、今からでも飛ぶか?広野の母さんが向かった場所に」
「ううん。せっかくここまで来たんだから、あとはもう現代で辿っていきたい。今わかる限りのこと総動員したら、掴める気がする」
きっぱりとそう言うと、一条くんが隣に歩いてきた。
それから、私の頭の上に手をポンと置いて、コテンと首を傾けた。
「俺も、それがいいと思う」
「あ、うん、えっと……」
「?なんだよ」
近い。
至近距離で顔を覗き込まれて、しかも頭を撫でられて、平常心でいられるわけない。
「きっと、もうすぐ全部わかるから。それまで頑張ろうな」
「……うん」
なんだろう、出会いたての頃より、一条くんが優しくなってる気がする。
こんなのもう、気になって当然じゃないのかな。
「よし。じゃあ昨日本屋でわかったこと整理するか」
「うん!」
実はそのために屋上に集合したのだ。
昨日、一条くんと行った本屋で、思わぬ収穫がたくさんあった。
それを、もう一回2人でまとめてみようと。
向かい合うように地面に座り込んで、買ってきた紙パックのジュースにストローを挿した。
一条くんはコーヒー、私はカフェオレ。