君は世界を旅してる
「最近、一条と一緒にいなくない?」
そう千尋に言われたのは、一条くんと最後に話してから何日か経ったときだった。
「え、そうかな。普通だと思うけど」
「うそ。だってあんた達、すれ違っても目も合わせないじゃない。何かあったの?」
「何もないよ。逆に、ここ最近がおかしかったの。今が普通」
そう言っておいて、自分の酷さに吐き気がした。
恩を仇で返すって、こういうことを言うんだろうか。
「私はいいけどさ。こうして昼休みに真子といれるしね」
ふふっと笑ってそう言ってくれる真子は、もしかしたら気をつかってくれてるのかもしれない。
あまり聞かれたくないことだと、匂わせてしまっただろうか。
「まーこーちゃん!」
ガヤガヤと騒がしい昼休みの教室に、一際目立つ声がした。
その声がした方向を見ると、一際目立つ存在が立っている。
「げ、あいつもいたか……」
宇宙人でも見るような目でその方向を見た千尋が、げんなりしたような声を出した。
「僕も一緒に食べていい?あ、ここ座るね!」
相変わらずこっちの返事を待たない人だ。
いいよともだめとも言えないまま、お弁当を持った早川くんに隣の椅子に座られた。
「ちょっと、女子の注目をこっちに集めないでよ」
「まーまー青木さん、仲良くしようよ」
「みんなこれのどこが良いの?」
はあっと千尋がため息をつく。
早川くんは気にもせずに、いつも通りにこにこ笑っている。
私はそんな2人の会話を聞き流しながら、教室をぐるっと見渡してみる。
ほら、やっぱり。
島崎さんが無表情でこっちを見ている。
恨まれるようなことはしたくないんだけどなあ。