君は世界を旅してる
「ねー、気になってたんだけどさ」
彩りが綺麗なお弁当を広げながら、早川くんが口を開く。
お母さんの手作りだろうか。それか女の子からのプレゼントかも。
「最近、一条と一緒にいないね」
「ぐふっ」
さっき同じことを聞かれました。
ブロッコリーを詰まらせそうになって、慌ててお茶を飲んだ。
「仲良さそうだったのに。喧嘩でもした?」
「別に、何もないよ」
「え〜、うそ。気になるよ〜」
「早川くん、珍しく同意見」
すかさず千尋が口を挟む。
だよね〜と笑った早川くんの顔に、まるで”気になります!”と書いてあるようだった。
面白がっているようにも見える。
「……早川くんには関係ないから」
「あ、それ一条にも同じこと言われた」
思わず箸が止まった。
最近どうしたのかって、一条くんにも聞いたのか。
一条くん、それを聞かれたときどんな気持ちだったんだろう。
今の私みたいに、どう答えたらいいかわからなくて困ったのかも。
だって、秘密だらけで成り立ってた私と一条くんの関係は、絶対に誰にも話すわけにはいかないから。
そう考えたら、私達の関係ってなんて不安定だったんだろう。
「僕はラッキーだけどね。真子ちゃんと一緒にいられる時間が増えるから」
「早川くん、それについても同意見だわ」
「え、僕と青木さんって気が合うのかもね」
「……それは否定するわ」
「えー!?」
そんな不安定な関係、いつ崩れたっておかしくなかったんだ。
それなのにあんなに舞い上がって、馬鹿みたい。
自分の間抜けさに、ふっと笑いが漏れた。
「……もう一緒にいることはないよ」
何か聞きたげにしている千尋と早川くんの視線から逃れるように、窓の外の空を見上げた。