君は世界を旅してる


自分のことばかり考えていた私は、千尋の様子がおかしいことに気付くことが出来なかった。

ある日、登校してきた千尋の顔に痣が出来ていたのだ。

「千尋!?どうしたのそれ!」

先に登校して席に座っていた私は、ガタガタと椅子を鳴らしながら立ち上がって駆け寄った。

「あ、おはよー真子。別に、ちょっとぶつけただけよ」

どんくさいよね〜とヘラヘラ笑う千尋は、見ていてとても痛々しかった。

「……誰かに殴られたの?」

「まさか!物騒なこと言わないでよ。大丈夫こんなのすぐ治るから!」

それが嘘だと言うことは、すぐにわかった。
どこかにぶつけたような怪我じゃないことは明らかだし、千尋の態度が引っかかったからだ。

本当にどこかにぶつけて怪我しただけなら、そんな風に笑って痛いのを隠す必要なんてない。
なんてことないみたいに笑ってるのが、逆になにかあったことを物語っているのだ。
こうなれば千尋は素直には話してくれないだろう。

でも、千尋が大丈夫って言うならそれを信じたほうがいいのかな。話したいときが来たら、自分から話してくれるかもしれないし。

その時に備えて、いつ頼られてもいいように心構えだけはしておこう。
そう思って、「気を付けてよ?」って言いながら、笑っている千尋の隣で同じように笑った。


その考えが甘かったことは、すぐに思い知ることになる。


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