君は世界を旅してる
「彼、最近……、会社の経営が上手くいってないって悩んでたの」
大樹さんは大学生なのに企業していると言っていた。
それは、私には想像出来ないことだけど、きっと大変なことなんだろう。
「それで、よくイライラしてて。借金もあるみたいで、何度かお金のこと相談されたこともあったの」
「え、高校生にお金の相談!?」
「あ、違うのお金貸してくれとかそういうのじゃなくて、制服をネットで売ってほしい、とか。よく知らないけど、高く売れるらしくて」
思わずあんぐりと口を開けてしまった。
そのあと、気持ち悪さに鳥肌が立った。
女子高生の制服をどこの誰だかわからないような人に売って、お金にしようとしていたのだ。
「そ、それで制服売っちゃったの!?」
「もちろん断ったわよ!さすがにそれは出来ないって言って」
「だよねぇ」
ほーっと息をついて胸を撫で下ろした。
「でも、それで彼怒っちゃって。助けてくれないのかって。……すごく、怖かった」
「それで殴られたの?」
千尋は肯定も否定もしなかった。
私の言葉が合ってるってことだろう。
「今までそんなことなかったのに、最近になって荒れるようになったっていうか……。それで昨日、別れたいって言ったんだけど」
「えっ!」
どうして別れないのかと思ってたけど、千尋は既に別れ話をしていたらしい。
「そしたら手首を掴まれて、ふざけるなってまた怒って。すごい強い力だったから、また痣になっちゃったの」
ふつふつと、私の中に確かな怒りが込み上げてくる。
なにがふざけるなだ。
「じゃあ、まだ別れられてないの?」
千尋は力なく頷いた。