君は世界を旅してる
そこで、1つ思いついたことがあった。
一条くんのこの力を使えば、もしかしたら。
「…アンタ、ほんと絶対死んでも誰にも言うなよ。墓場まで持っていけ」
「うん、い、言わない」
「学校の奴ら、誰も知らないんだ。親しか知らない。これから先他の人に言うつもりもない。絶対守れよ」
「約束する。……ほんとに、絶対言わない。から、」
言いかけて、言葉に詰まった。
良いのだろうか。
これを口にしたら、今後の私の人生が大きく変わってしまう気がする。
それを、私は望んでるんだろうか。
下を向いて黙ってしまった私を見て何を思ったのか、一条くんが顔をのぞきこんできた。
「……なんだよ」
ぎゅっと拳を握り込んで、何故か足先に力を入れた。
胸の中で1つ決心をした私は、顔を上げて一条くんを真っ直ぐに見つめた。
「協力してほしいことがあるの」
これが、私と一条澪くんとの奇妙な関係の始まりだった。
同じ高校に通っていながら、3年間一度も同じクラスになったことがなくて話したこともなかった私達が、立ち入り禁止の屋上で会ってしまったこと。
それは運命なのか偶然なのか、幸運なことなのか不幸なことなのか。
今はまだ、わからないことだらけだ。