結婚の約束をしよう
「結愛?もしかして…竹田さんのこと?」

「そう、竹田結愛。」

「でも竹田さん、好きな人がいるって…。」

「うん、知ってる。でも好きなんだ。」

表情は見えないけど、でも陵はきっと今…笑顔だ。

私はというと、ここにいる事がバレない様に、口元を押さえて必死に気配を消す。


ただ、止まらない涙だけはどうにもならなかったーーー…。

私の前では好きだなんて一度も言ったことないくせに……こんなとこでサラッと言わないでよ。

普段の陵の言動もつかみ所がないし、もしかしたら今だって、長谷川さんに断るために言ってるだけかもしれない。

なのに何で私はこんなにも泣いてしまうのかーーー何を期待しているの?

「子供の頃に約束したんだ。」

「約束…?」

「結婚するって。」

陵ーーー…。

「なにそれ。でもダメじゃん、竹田さん好きな人がいるんでしょ。」

長谷川さん、どこか不機嫌そう……そりゃそうか、たった今フラれたんだから。


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