結婚の約束をしよう
「深月、おはよう。」

「あ、おはよー結愛。もぉ雨でベッタベタ。」

私よりも一足先に学校に到着していた深月が、靴箱のところで濡れた身体を拭いていた。

「風が強かったもんね。私もベッタベタ。ねぇ深月、陵見た?」

私は傘をくるくると巻きながら、深月に訊ねた。

「え?陵…?」

深月は、メガネの下からくるんとした可愛い目をのぞかせていた。

その目に、?マークを浮かべて。

「うん、笹野陵。今朝ウチに来なかったからさ。」


「何の話?笹野陵って、誰?」

「え…深月何言って……。」

深月の言葉に、どうリアクションしたらいいか分からなかった。

「やだ深月、冗談キツイよ…。先週私たちのクラスに転校してきたじゃん。私の幼なじみの笹野陵…知ってるでしょ?」

「転校生?何それ、夢の中の話ー?」

「…。」

楽しそうにケラケラと笑う深月とは、全く話がかみ合わなかった。



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