結婚の約束をしよう
1階に下りて行くと、母さんがせかせかと動いていた。

「なに?どうかしたの?」

状況を理解できないまま、それを探るために両親に話しかける。

「今日のうちに、近所に挨拶に行くと言ってなかったか?」

答えたのは父さんで、コートに袖を通しているところだった。

「あいさつ?何の?」

「9年振りに戻ってきたんだ、その挨拶に決まってるだろう?」

「オレ…留守番しててもいい?」

「しょうがないわね。じゃあお父さんと行ってくるから待っててよ。」

「うん……。」

オレはテレビをつけると、ソファに転がった。


9年振り?

戻ってきた?

「…。」

確かにここは、9年前まで住んでた家だけど…。

オレは、夢でも見てるのか?

だってオレは今、生きるか死ぬかの瀬戸際にいるんじゃなかったのか?

だけど、さっきは見えなかった自分自身が、今はしっかりと見えている。


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