結婚の約束をしよう
あの背の高いヤツ……オレだってあと2、3年もすればあれくらいの身長にはなれたはず。

世の中不公平だな。

「勇気は、自分の中で創り出すものだ。」

その好きなヤツに勇気を出して告れと、結愛を励ますために言った言葉ーーー偉そうなこと言って…オレだって肝心なことを結愛に言えないでいるのに。

オレは多分もうすぐ死んで、結愛の前から居なくなるということを。

結愛にお別れを言う時間を、今オレはもらっているんだと勝手にそう思っている。

誰に…って、神様ってヤツか?

よく分からない事は、深く考えないようにしていた。

ただオレが今こうして結愛の前に戻ってきているーーーその事実だけで充分だった。


毎晩見る夢の中のオレは相変わらず病院のベッドの上で、母さんがほぼ付き添っている。

看護師の見回り以外では、たまにヤスや他の連れが来て、オレの顔を見ていくーーー夜には、仕事帰りの父さんも来てくれる。

オレは、それらに応えられない状況だった。

でも、目が覚めるとそこは、9年前に住んでた家で、それを実感するためにオレは、毎朝結愛を迎えに行く。
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