結婚の約束をしよう
夢の中の現実を、少しでも忘れたくて…。

結愛は、オレが上着を着ていない事をすごく気にかけてくれていた。

真冬に上着ナシだから、無理もないか。

でも不思議と寒さを感じる事はなく、やっぱり今いるオレは違うんだと、心のどこかで認めていた。

「…結愛。」

明後日は結愛の誕生日ーーーお祝いくらいさせてくれと、オレらしくないと思いながら毎晩空に祈る。

軽い脱水症状になってまで走った、マラソン大会。

授業中にあげた手。

深月以外の子と話す姿。

少しずつだけど変わってきている結愛を見ているのが、楽しかった。


木曜日ーーー明日は、結愛の誕生日。

朝、オレはいつものように、結愛を迎えに行く。

この朝が、いつまで続くのか…そんなことばかりを考える。

「なぁ、結愛?オレとさ、結婚する?」

さよならも言えないオレは、結愛の目を見て話せなかった。

「え〜?しないよー(笑)。」


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